「主張」第20回「損害保険業界が、いま問われていること」

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「主張」第20回「損害保険業界が、いま問われていること」

 2022、23年に発覚したビッグモーター事件や火災保険料率調整問題は、損害保険業界に大きな衝撃を与えた。これらの出来事は、損害保険業界が長年抱えてきた構造的課題が、社会環境の変化によって表面化した結果である。これらを契機に、損保業界がどのように変わるべきかが問われている。

 保険は「信用」を基盤とする産業である。しかし長らく、その信用は、代理店の善意、現場の慣習、暗黙の了解といった「見えない前提」の上に成り立ってきた。ところが現在、内部リークやメディア・行政の監視強化により、「合法だが不適切」「説明できないが慣習による」といった行為は許容されなくなっている。売れているかどうかより、説明できるかどうかが、いまの損害保険業界に突きつけられている新しい課題である。

 損害保険会社は、商品と料率を作って代理店に販売を任せるだけの存在ではいられない。販売の現場で何が起きているのかを把握し、是正し、説明できる態態を構築する責任がある。引受だけでなく販売プロセスそのものも経営リスクである。代理店もまた、「売れること」だけでは評価されない時代に入った。「なぜこの商品なのか」「なぜこの補償内容なのか」「なぜこの保険料なのか」、これらをお客様にも、損害保険会社にも説明できること、そして、その説明内容を後からでも証明できることが求められることとなった。今後生き残る代理店とは、「説明力があって契約者が納得して契約し、その経過を簡潔明瞭に記録して残せる代理店」と言える。さらに、システムベンダーの立ち位置も大きく変わる。単なる受託開発、言われた通りのシステム構築では、業界の変化に十分な価値を提供できない。これからは、制度・規制を正しく理解し、業務の意味を把握し、不正が起きにくく説明しやすいプロセスを設計できることが求められる。

 これらの課題に対して、いかにDXやAIを活用していくか。従来のDXは「効率化」の観点で奏功してきた。手続きは速くなったし、入力は楽になった。しかしこれからのDXは、「業務を速くすること」だけでなく、「業務を説明できる形にすること」が不可欠である。そしてAIは、これらの課題を解決する強力なツールとなる。AIの役割は、気づきを与え、情報を整理し、判断の根拠を可視化することにある。損害保険会社にとっては、代理店行動や事故データの中から「違和感」を見つけ出し、人間が対応すべきポイントを示す。その点で、AIは注意喚起装置と言える。代理店にとっては、提案理由の整理、約款・規程の参照、記録の要約(効率的に証跡を残すこと)など、AIは説明責任から守る相棒となる。また、ベンダーにとっては、深化のある規程理解や業務構造の明確化を助け、システム設計の質を底上げする道具となる。

 売る力から説明する力へ。慣習から証明へ。属人化から仕組みへ。これらの変化にどう向き合うかが、損害保険会社・代理店・システムベンダーすべてにとって勝負の分岐点となる。その時、AIの賢い活用がキーポイントとなりそうな予感がする。

(トムソンネットSBP:まりん、260222)