「主張」第22回「“ダイレクト”と“代理店”の融合モデルへの転換」
1996年の保険業法改正によって解禁となった自動車保険の通信販売(ダイレクト)については、当初は通販専業損保だけが扱っていたが、現時点においては3メガ損保がいずれも傘下にダイレクト系損保を抱える体制へと変っている。ところが、わが国におけるダイレクト系の保険料シェアは、未だに10%強程度に低迷しており、諸外国との差は大きい。
1.米・Progressiveの販売チャネル戦略
そもそも、同じ保険会社の傘下に2つの販売チャネルを抱える体制に先鞭をつけたのは1994年にこの体制を発足させた米・Progressiveである。同社は「電話」によるダイレクト販売から開始し、1997年からインターネット販売を始めている。同社は、2つの販売チャネル間での保険料水準をほぼ同一に設定している。なお、両チャネル間で保険料算出スキームが違うため、ダイレクトの方が若干安くなるケースが多い。
我々が「図説 損害保険ビジネス」の初版を上梓したのは2006年4月のことである。その9章で、同社が「保険料の試算はダイレクト、契約は代理店」を顧客にお勧めし、顧客が両販売チャネルを上手に使い分けていることを紹介している。
同社は、“ダイレクト”を決して“安売り”の手段とは捉えておらず、顧客にとっての便利なツールと考えている。我々もこの考えに賛成であることを同著の中で強調している。
2.“ダイレクト”と“代理店”の融合モデル
最近になって、筆者はProgressiveの“ダイレクト”と“代理店”の融合モデルが著しく進化していることを確認している。その巧妙な仕組みは驚異的である。同社の用意している2つの販売チャネルの融合モデルは、「ダイレクトと代理店の間を自由自在に行き来の出来る極めて便利なツール」となっていた。
同社は、代理店の役割を、“顧客満足度を高めるためのコンサルタント”と定義している。販売チャネル間の保険料水準をほぼ同一にすることによって、お客は代理店とダイレクトの“いいとこ取り”が可能となり、それが顧客満足度を向上させ、継続率の向上に結びついている。
3.米・オールステートの追随
米国でも、“ダイレクト”と“代理店扱い”のダブル販売チャネル方式は、トラベラーズ、ネーションワイド、オールステートなど多くの企業に広がっている。
その中で、オールステートは2021年からプログレッシブに倣って“ダイレクト”と“専属代理店扱い”の保険料水準をほぼ同一に切り替えている。その実現方法は、専属代理店の継続契約の手数料水準を大幅にカットすることによって、専属代理店系の保険料水準をダイレクト並に引き下げるという大胆なものであった。
一方、専属代理店の継続契約は、オールステートの「顧客管理センター」が直接行う方式に切替えている。さらに、ブランド戦略を見直すなど、販売網戦略を大胆に変革している。以上の結果、同社の業績は近年劇的に改善している。
わが国メガ損保も、“ダイレクト”と“代理店扱い”の融合モデルへの切り替えを考えるべき時期に来ているのではないか?
(トムソンネットSBP:鈴木治)