「主張」第18回「これからの代理店が目指すべき姿」
2025年の保険業法および監督指針の改正は、保険募集のあり方について、戦後80年にわたり続いてきた業界慣行からの決別を求める、抜本的な体制改革を突きつけています。
読者の皆さんは、今回の改正の出発点となった金融審議会ワーキング・グループ報告書「おわりに」に記された、次の一節を覚えておられるでしょうか。
「損害保険会社は、『顧客本位の業務運営に関する原則』や改正金商法に基づく顧客等の最善の利益を勘案し、誠実かつ公正に業務を遂行する義務を改めて認識した上で、適切なガバナンス体制を構築するとともに、これらの趣旨に反する古い慣習と決別すべきである。」
この文章の主語を「損害保険会社」から「代理店」に置き換えても、そのまま当てはまることを、私たちは強く認識すべきです。もはや、保険会社の改革や対応を待つ時代ではありません。代理店自らが主体となり、古い慣習を打ち破り、改革の扉を開くことが求められています。保険会社からの便宜供与を拒絶することはもちろん、長年の取引関係の中で形成された自己防衛的な姿勢や、忖度の文化そのものを、意識改革を含めて抜本的に変えなければなりません。
第一に取り組むべきこと ― 企業理念の明確化
最初に確認し、実行すべきは、代理店自身の企業理念の明確化です。改革が進む中で、市場から選ばれる代理店は確実に絞り込まれていくでしょう。生き残るためには、代理店という企業の体質そのものを変えていく必要があります。
そのためには、企業理念が経営層だけでなく、すべての社員に浸透している土壌をつくらなければなりません。「これが私たちのミッションだ」という共通認識があってこそ、代理店は環境の変化に流されることなく、確固たる信念をもって行動できます。なお、新たな企業理念の策定において、経営だけが先行することは決して望ましくありません。全社員との健全な対話による合意形成こそが、実効性のある企業理念を生み出すための絶対条件であることを、忘れてはならないのです。
第二の柱 ― 徹底した生産性向上
次に求められるのが、徹底した生産性の向上です。今回の規制強化により、業務・事務負担の増加は避けられません。比較推奨説明(特に乗合代理店)や代理店業務品質第三者評価制度など、新たに求められる業務については、標準的な業務フローが十分に整備されていないのが現状です。
さらに、これらの業務には証跡性の確保が求められます。人手や紙による管理では、工数が増えるだけでなく、業務品質を維持することも困難になります。この課題への有効な解決策として、DX(デジタル技術による価値創出)や生成AIの活用が不可欠となります。
その第一歩は、既存業務の徹底的な分析です。特に見落とされがちなのが、属人的になりやすい営業担当者の業務です。営業テリトリーの見直しや、内務担当との役割分担・連携の再設計が重要なポイントとなります。
次に取り組むべきは、既存システムの活用状況の検証です。システムの機能を十分に使いこなせているか、特に自社開発システムの場合、運用そのものが負担になっていないかを冷静に見極める必要があります。場合によっては、SaaS型システムへの移行も有力な選択肢となるでしょう。
比較推奨説明システムへのRPA導入や生成AIの活用については、単独で取り組むのではなく、志を同じくする代理店同士でグループを形成し、共同で検討・研究しながらノウハウを蓄積・共有することが、最も効率的な近道となりますので、この点については、別途あらためて提案したいと考えています。
(トムソンネットSBP:シオプチ)