「主張」(臨時)
「保険毎日新聞への論考『自動運転時代への自動車保険について考える』の連載開始にあたって」

 近年、損害保険の主力商品である自動車保険料の大幅な値上げが相次いでいる。自然災害の増加や修理費の高騰による恒常的な収支の悪化が要因である。同様の傾向は諸外国も然り、消費者の保険離れといった最悪のシナリオが懸念される。他山の石として損保各社が適切な対応を怠れば経営危機を招く可能性も否定できない。

 我が国の自動車保険の歴史は古く、1914年に東京海上保険株式会社(現:東京海上日動火災保険株式会社)が営業認可を取得したのを嚆矢に、戦後の高度成長期、車両の急激な増加に伴い交通事故が多発して生じた、いわゆる「交通戦争」などを数々の困難を克服して現在に至っている。一方、自動車の安全機能は長足の進歩を遂げ、運転者を介さない自動運転車の公道走行も実施されている。将に、自動車に関わる全産業が大きな変革の分岐点に差し掛かっている。

 さて、トムソンネットでは、社内に専門分野や課題別にいくつかの研究会を設置し、保険業界の動向を継続的に調査、分析し、その研究成果をWebセミナー、特別講演会、専門誌への寄稿、そして出版物などを通じて発信しているが、その一つに「自動運転と保険研究会」がある。これまで同研究会は「100年に一度の自動車産業の変化と自動車保険」を主たるテーマに置き、『図説 損害保険ビジネス』(金融財政事情研究会刊)は第4版に1章を割いて持論を展開した。さらに、論考として、「自動運転と保険について考えるー米国トラベラーズ白書を読んでー」2018年12月13日、「自動運転と保険について考えるー米国KPMG・マッキンゼー白書を読んでー」2023年10月12日、10月19日、10月26日を保険専門誌インシュアランス損保版にシリーズとして発表している。

 今般、掲題のとおり、損生保業界の専門日刊紙である保険毎日新聞に新たな研究成果「【論考】自動運転時代への自動車保険について考える」を3部構成、全16回の連載として同紙7月23日号より月2回のペースで始めている。主な項目として、

第Ⅰ部「自動運転時代への突入」
 第1回「はじめに」、第2回「自動運転をめぐる世界と日本の動き」、第3回「自動運転車の開発と普及」、第4回「テスラのEVとAV戦略」、第5回「自動運転時代の到来と自動車保険市場」

第Ⅱ部「世界における自動車保険と交通被害者保護制度」
 第6回「自動車保険の誕生とその強制化の歴史」、第7回「日本における自動車保険と自賠責保険の誕生」、第8回「「米国における自動車保険とその強制化」、第9回「韓国における自動車保険とその強制化」、第10回「ドイツにおける自動車保険とその強制化」、第11回「イギリスにおける自動運転時代の自動車保険制度」、第12回「世界の強制自動車保険制度の類型化」

第Ⅲ部「自動運転時代における自動車保険と被害者保護の方向性」
 第13回「自動運転時代の自賠責保険」、第14回「自動運転時代の自動車保険で考慮されるべきテーマ」、第15回「自動車保険の料率制度の歴史と今後の方向性」、第16回「まとめと提言」

 本論考は、自動運転時代におけるリスクと保険制度について真正面から議論し、想定されるあらゆる可能性を探る試みである。本テーマには不確定要素が多いが、専門家の枠を超えて多くの皆様に是非ご一読をお願いするとともに、忌憚のないご意見、ご鞭撻を切に期待したい。
(小島修矢:トムソンネットSBP)

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